マンションの騒音と苦情

マンション騒音(足音)の対処法

マンションの足音の騒音に関する裁判 総説

      2015/12/17

近隣騒音に困っていると、問題を訴訟で解決できないかと考えることもあるかと思います。結論から言うと、マンションの近隣騒音トラブルを裁判に訴えることによって解決することはほぼ不可能です。
その理由を、これから説明します。

マンションの騒音被害者が裁判で勝てない理由

受忍限度論とは何か?

民事訴訟では、原告と被告、双方の立場があります。裁判所は、双方の主張を聞くことによってトラブルの事実関係を把握し、そこに法律を適用して判決を書きます。

一般的に言って、たいていの訴訟には、双方当事者にそれぞれの言い分があり、どちらも自分が正しいと考えています。
これは騒音トラブルでも同じです。

被害者は実際に騒音被害を受けているのですから、当然、自分の言い分が正しいと思っています。これは当然のことです。
一方、総音源の人(加害者)は、ここで生活しているのだから生活音が出るのは当然だ、と考えています。
一般論としては、どちらの言い分にも何がしかの筋があります。

双方に筋があるのにトラブルになってしまう理由は、ひとえに、そこが一戸建てでではなくて、一つ屋根の下だからです。
騒音トラブルの最大の原因は「そこがマンションである」ことです。
騒音源となる人が住んでいる、という事実のさらに根底に、「そこがマンションである」という根源的なトラブル原因があります。

そして、裁判所は、この根源的な原因のなかから、判決に書くべき理屈を見い出します。
確かに騒音はある。気になるのもわかる。しかしそこはマンションだ。どうしても音は聞こえてしまう。したがって、大前提として、ある程度までは騒音を我慢すべきだ。我慢すべき限度を越える騒音があった場合にのみ、裁判所は「静かにしろ」と言う判決を書く。
これが裁判所の基本的な考え方です。

この「我慢すべき限度」のことを、裁判所は「受忍限度」と呼びます。
マンションの騒音問題が裁判で争われたケースでは、「受忍限度を越える騒音はなかった」と判断されることが多いようです。

受忍限度の判断方法

裁判所が、「騒音が受忍限度を超えているか否か」について判断するときには、騒音の大きさや頻度や時間帯のほかにも、様々な要素を加味して考えます。
たとえば、騒音低減の申し入れを受けた加害者が何らかの対策を講じたか、対応は誠実だったか、などの諸事情を、裁判所は考慮します。

実は、これらは騒音の現状とは直接関係のない事実です。対策をしたって、うるさいものはうるさいのですから。
例を挙げると、床にカーペットを敷いても、騒音がたいして低減しないことはよくあります。

しかし、裁判所はこのようなことも加味して判断するのです。
どうしてこういう不条理なことをするのかというと、以下のような理由があります。

要は「落とし所」の問題

もともとこの「受忍限度」という考え方は、
「双方にそれぞれ一定の我慢をしてもらう」
という考え方が基礎になっています。
ようはシーソーのようなもので、一方にこれだけ我慢をしてもらったならば、他方にもこれだけ我慢をしてもらおう、という考え方です。そうやって、対立する当事者のバランスをとる、というのが裁判所の発想です。

こういう考え方のことを、法律用語では「利益考量・比較考量」といいます。比べて判断しようという発想です。

比べて判断しようという発想ですから、加害者がカーペットを敷いたとか、椅子の足にフェルトを貼ったとか、子供に強く注意をしたとか、そういう加害者側の対応が確認できれば、それが必ずしも騒音の低減に目立った効果がなかったとしても、
「あとは被害者側で我慢してください」
というふうに裁判所は考えるのです。

つまり、この「受忍限度」という言葉は、平たく言い換えると
「落とし所」
ということです。
紛争を落とし所に落とすために裁判所が考えた「方便」、「マジックワード」が、「受忍限度」とう概念です。

その結果、判決文では、
「騒音はこの程度であって、結構大きい。しかし、被告はこれこれの対応をした。以上に鑑みると、「受忍限度」内である」
という理屈(理屈になっていないと個人的には思いますが)で、請求棄却(被害者側敗訴)ということになる例が少なくないのです。

双方当事者の真ん中(落とし所)をとって、「受忍限度」というマジックワードで処理してしまうわけですから、被害者側がいくら理詰めで主張しても、なかなか言い分は認められません。
これから4つの判例を見ていきますが、そのなかで以上のことを確認していきます。

 - マンションの近隣騒音に関する裁判の例

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